集団食中毒
―第1幕―



 授業終了のチャイムが鳴り響く中、聖女学園2年生の5人の少女が必死の表情でトイレに向かって進んでくる。

 走ってくるのではない。
 聖女学園の廊下には腰より高い位置に三角棒が渡されており、女子生徒はその上に股間を擦りつけながら進まなくてはならない。
 あらかじめ定められた場合を除き、いかなる理由があろうと――クラスの女子全員が原因不明の猛烈な腹痛と便意に襲われ、授業が5分早く終了となったとしても――この規則を破ってはならないのだ。


 三角棒の頂点は性器だけでなく、荒れ狂う便意を必死に押しとどめている小さな後ろの窄まりにも容赦なく刺激を与える。

 この移動方法に慣れている2年生ともなれば普段は止まることなく進むことができるが、今回ばかりは便意をこらえるために、たびたび静止せざるを得なかった。
 しかも、先頭の生徒が動きを止めれば後ろの生徒も進めなくなり、普段の数倍以上の時間をかけて移動することになってしまったのである。


「……あ、あと少し……っ!!」
 先頭に立って三角棒を進んでいた希が、ついにその終端にたどり着き、トイレまでのわずかな距離を走り抜ける。

 痛むお腹を抱えながら、一番近い手前向きのトイレに駆け上がる。

「も……もうだめっ……!」
 股を小さく開いてしゃがみ込むその中央には、震える肛門が半開きになって黒ずんだ固まりが見えている。

「うぅっ……くっ!!」
――ブリッブリュリュリュリュビジュブリュルルッ!
 昨晩も寮のトイレで苦闘して結局出せなかった大きな固まりが、いともたやすく肛門から押し出される。

「あ、ああっ」
――ブジュビジュ!! ブリュドポンッ!!
――ブビビブーーッ!! ブリリリリリブポッ!!
 硬質の便が途切れるとドロドロの下痢便が弾け、すぐまた腸内から別の固形便が押し出される。

 希が授業中に最初に便意を訴えたのは、原因不明の下痢のせいだけではなく、便秘が数日間続いていて腸内に大量の便が溜まっていたためだったのだ。

「うぅっ、くっ!!」
――ブビビビビチャビチビチビチッ!!
――ブリッブピピーーッ! ニュリビュリリリリリブプッ!!
 下痢便と固形便をが入れ代わり立ち代わり肛門から吐き出され、ガラス張りの便器に山と海をつくっていく。


――ギュルルルゴロギュルーーッ!! グギュルーーッ!
「うぅぅ…………あ、あっ!!」
――ビュッ!!
 激しく鳴るお腹を抱えながらふらつく脚でトイレにたどり着いた由紀は、奥向きの便器にしゃがみ込みながら茶色い飛沫を飛ばしてしまった。

「うぅぅっ!!」
――ビシャーーーーーーッビシャビシャビシャッ!!
――ブピッ!! ビシャビシャッビュルブジャーーーーーーーッ!!
 由紀の便は完全な水状だった。

 朝からお腹の調子が悪く、寮では起床直後そして朝食後の2回、下痢便を洋式トイレに注ぎ込み、1時間目の後の休み時間にも学校のトイレで液状便を排泄していた。
 腸内に固形物は残っていなかったのだ。

「痛っ……うぅぅ……んっ……!!」
――ブシャビュビュビチィーーッ!! ビュルーーッ!
――ブシャビィーーーーーーーーーッ!! ブピッビシャアアアッ!!
――ビュッブシャァビチィーーーッ!! ビュジャァァビチャブシャァァァァァァァァビチィーーーーーーッ!! ビシャーッ!
 由紀の肛門は壊れた蛇口のように茶色い水を噴出し続けている。

 全力で便器に叩きつけられた水流は無数の飛沫となって跳ね返り、ガラス製便器の側面を、その上の床面を、さらに上の靴や靴下にまで汚れを広げていった。


――ギュルルルルルゴロギュリリリリッ……!!
「ひっ……あ、あぁ……だめ……」
 悲痛な音を声帯と腹部から奏でている瑞穂が手前向きの便器にまたがる。

「う、うぅ……だめ……ああ……」
 しゃがんで数秒の間。
 ひくひくと震える肛門が最後の抵抗を示すが、少しずつその膨らみは増していき、ついに内側からの圧力に屈して弾けた。

「あぁ、嫌、いやあぁっ……!!」
――ブビュルルルブリュビジュブバッ!! ブビビブバビュルッ!!
 瑞穂は緩めの便を一気に弾けさせた。

 もともと胃腸が強い方ではなく、普段も軟らかめの便を恥ずかしがりながら排泄していることがある。

「えっ……あ、あっ……!!」
――ブビブビビビブリリリビチチチッ!! ブビブリリビチィィビィーーッ!!
――ブジュブババブジュルーッブジュルーーーーーーーーーーーーッ!! ビィッ!!
 しかし、あっという間におしりからの噴出は水気を増し、わずか数秒で軟便を通り越して液状に変わってしまった。


「ぐっ……うぅぅっ……」
 真由美が残り一つとなった奥向きの便器にしゃがむ。
 充血したおしりの穴がやや斜めに廊下側に向けて突き出される。

――ブバァッ!
――ブチュルルルブリュニュルルルルルッ!! ブチュルッ!
 少量の下痢便が飛び散り、一瞬の間をおいて固形を保っている便が滑り出てくる。

 バナナ状という言葉のとおり10センチ程度の長さがある固形便だったが、その表面は液状の下痢便で覆われており、光沢をガラス製の便器に反射させていた。

「はぁっ、はぁ、あ、ぐうっ!!」
――ブジュルーーッ! ビチチッ!
――ブチュブリリリリリリッ!! ミュルルブジュブリュルルッ!
――ブビーッブババビィィッ! ブジュルーーッ!
 液状の便を激しく飛び散らせながら固形物を次々と排泄していく。
 固形物の長さと太さは徐々に小さくなっていき、直径2センチ弱の小片が下痢便の濁流に混ざるのみとなった。


「うぅ〜……は、はやくかわってぇ…………漏れちゃうよぉ……!」
――ゴロピーーグルルルギュルルッ……!!
 一歩遅れて到着した綾。
 人一倍身長が低い彼女は、三角棒に登るのに手間取って出遅れてしまったのだ。

 締め付けられるように痛むお腹を抱えたまま、目の前で繰り広げられる4人の痴態を眺めるしかなかった。

――ゴロッピーーーグウーーーーッ!! グギュルルグルゴログルッ!
「うぅぅ……誰でもいいから……早くぅっ!!」
 悲痛な願いとともに視線を動かしていく。

 恥ずかしい姿を見てはいけないとの思いはあるが、どの便器が一番早く開くかが気になって仕方ないのだ。



――ブリリブチュブチュルルルルッ! ブビビィーーッ! ブリブリュブリリッ!! ブビブリッ! ブチュブビュブチュルッ!
――ブシャッビシャーーーッビシャビュルーーーーーーーッ!! ゴロロピィグギュルルルルルルッ!! ブパッビュルルッ!! ブピッビシャビィーーッブシャーーーーーッ!!
――ビチャブビーーッビチブバァァァァッ!! ビュッ…………ビチィィブバーーッビィッ!! ………………ビュルビチャァァッ!
――ビチブリブビィッ!! ブビビビチィィィィィィブビビチーーーッ!!
 4人それぞれの排泄が続く。

 明らかに症状がひどいのは由紀であった。
 完全な水状便。
 ガスが肛門を広げて破裂するわずかな時間を除いて、止まることなく肛門から便器に向かって茶色の滝が流れ落ちている。
 苦しげなお腹の音は下痢便の爆音に囲まれても聞こえてくるほど大きく、痛むお腹を抱えてぎゅっと目を閉じている。

 便の性状で見ると希はまだ固形便が中心で、その合間に液状の下痢便が弾ける程度であり、下痢の酷さはそれほどでもなさそうである。
 しかし、便器の上端を超えそうな便の山ができているのにまだ排便の勢いは衰えない。
 便秘症のため、体内に大量の糞便が溜め込まれているのだろう。
 いつ終わるかは想像もつかなかった。

 瑞穂は最初は軟便であったが、ドロドロの下痢便を通り越して液状の便に変わってしまっている。
 止まることなく噴射しているわけではないが、あまりに腹痛がひどく、息み続けることができないのだろう。
 時折お腹をさすりながら呼吸を整え、顔をしかめて目を閉じた瞬間に液状便が放出される。
 放出と静止が不規則に繰り返されるが、終息する気配はまだない。

 真由美も軟便混じりの下痢便の排泄を続けている。
 排泄の勢いは相当に激しく、飛び散り方がひどい。
 半固形物が混じっているため、便器内の液体の跳ね返りも壮絶である。
 だが、それだけに出し切るのも早いのか、出はじめに比べると若干勢いは落ちているかもしれない。


「まゆちゃんっ!! お願いおトイレ替わって!! 綾もうだめ、漏れちゃうのっ!!」
――ギュルルピィーーッ! ゴログルルグギュルルッ!! グピィーーーーッ!!
 お腹から苦しげな声を上げながら、悲鳴に近い懇願をする綾。

「あ、綾……? で、でも、あたしもまだ……う、あぐっ!!」
――ビチチチブリリブババブバババブリリリリビチャーーッ!!
――ブリーッ! ビチチチビチブビィッ!!  ブリブリリビュリーーッ!
 会話を遮るように勢い良く排便が再開される。

「お願いまゆちゃ…………あ、あ、あっ!!」
――プジュブピピピピビピーッ!!
「綾?」
 綾の悲鳴とともに聞こえた大きな破裂音に、思わず驚いて視線を向ける。

「……………………っ……ふぅっ……」
――ギュルルピィーーーーーーーグルルルルルルルルピィーッ! ギュルゴロロピィーーッ! グウーーッ!
 綾は声を出すこともできず、両手でおしりを押さえていた。
 大音響のおならは出てしまったが、ぎりぎりのところでおもらしは免れたようだ。

「ねえ、お願い、お願いお願いっ!! ちょっとでいいの!! 終わったらゆっくり使っていいから!!」
「でも……うぅっ……」
 真由美は一瞬周りを見回したが、他の便器の排泄は全く終わりそうになかった。

「うんっ……ぐぅ……」
――ブチュルブジュブリュルッ! ブリリブリュブリュルッ!
「う……ぁぁぁぁ…………」
――ビュブブブブバビチィィブジュルーーーーッ!! ビュブブブブブブブブブブビィィィィィィブジュルーッ!!
「あぁぁ……嫌ぁ……」
――ブピピッビチチチチチチチチブバババババババブバァァァッ! ブバーーッ!! ブビィィィブビビビィィッ!

「……わ、わかったよ……あとちょっとだけ我慢して!」
 綾の必死の願いを断ることができず、ついに真由美は頑張って排泄を切り上げようと決意した。

「う……うん……綾がんばる……」
 おしりを押さえながら震えている綾の姿から目を離し、自分の腸内にある汚物を吐き出そうと踏ん張る。

「ふ……んっ……うううっ!!」
――ビチビチブリリッ!! ブビュルルビィーーーーッ!
――ビチチチチビチチチチビチーーーッビィーーーーーッ!!
 軟便を含んだ大量の下痢便が一気に便器に叩きつけられる。
 肛門での飛び散りも激しく、吹き飛ばされた茶色い水滴が靴下に無数の跡を残している。

「くぅっ!!」
――ブビビュリリリブリリリビチャァァァァァァァッ!! ブリブビビビィーーッ!
――ビュブブブブブブリィィビィーッ! ビュブブビビチビチャーーーーッ!
――ビチビチブリィブビィィィィィィィッ!!
 それでもお腹に力を入れ続け、ついに汚物の噴出が一瞬途切れた。

「……っ…………ふぅ……」
 真由美はおしりを拭くためのトイレットペーパーを手にするため、立ち上がって両足を1メートル間隔のマーク上に置く。
 肛門だけでなく、お尻全体が下痢便の飛沫で汚れていたのだった。
 これを拭かずに一時的でも便器を離れるのは耐えられなかった。

 ……1秒……2秒……3秒……
「うぅっ……早くしてよぉ…………」
――ギュルルルギュルーーーッ!! ゴロギュルルッ!!
 ……4秒……5秒……6秒……
「早く……だめ……もうだめっ……」
――グピィィィギュルルゴログギュルルルッ!! ギュルルグピィーーッ!
 計時装置はあと何秒かを表示してくれるわけではない。
 限界まで我慢している綾には永遠の時間に思えているだろう。

 ……7秒……8秒……9秒……
「あぁ……早くっ、早く早くはやくああっ!!」
――ブビィッ!! ブジュブババビジューーッ!
 紙が降り始める寸前、綾の肛門が決壊した。
 押さえている手を弾き退けるように、液状の便が噴出する。

「綾!? あ……っ……」
 綾のお尻から響いた爆音に気を取られた真由美は、一瞬脚をマークから浮かせてしまった。
 その瞬間、下がり始めていたトイレットペーパーが無情にも手の届かない方向へ戻っていく。

「あああっ…………だめっ!!」
 はじまってしまったおもらしを必死に抑えようとする綾。
 手が汚れるのも構わず、一層強い力でお尻の穴を押さえつける。

「し、しまった…………うぅ、仕方ない……綾、もういいよ、使って!!」
 真由美は反射的に脚をマークに戻したが、綾にあと10秒耐える力が残っていないのは明らかだった。
 仕方なく真由美はお尻も拭かず、便器の中身も流さず、とにかく綾に便器を使わせることにしたのだった。

「まゆちゃん…………あ、ありがと……」
 おしりを押さえながら慎重に便器に登る綾。
 おしりを押さえる指の間からは、漏れ出した便が流れ出して脚を汚し、床にも数箇所の茶色い汚れを残している。


「う、うぅ、出るぅっ………っあ!!」
――ビチブリィィィィィブリィィィィィブビーーーーーーーッ!! ビチブババババブビビビビビビビビビチチチッ!! ブビュルブババビチャーーーーッ!!
 全開になった肛門から、漏らしたのに数倍する量の下痢便が便器に注ぎ込まれる。

「うぅぅぅ……お腹痛いよぉ……」
――ビチブリィィィィィブリィィィィィブビーーーーーーーッ!! ビチブババババブビビビビビビビビビチチチッ!! ブビュルブババビチャーーーーッ!!
 便器はもともと空だったわけではない。
 真由美が作った軟便の山の頂上がえぐり取られ、若干の汚水が残るカルデラ湖のような惨状が形成されていた。

 下痢便の色も、真由美のものが焦げ茶色に近いのに対して、綾のそれは黄土色に近い。
 液状とまでは行かないがドロドロで形のない便だった。


 他の便器では、綾の痴態を気にかける余裕もなく、少女たちが自らの体の中の汚物との闘いを続けていた。
「うんっ…………ぐううっ……んっ!」
――ブチュッブリーーーーーッ! ブチュッブボボッ!!
――ブチュルルルルルルブビュブチュブリーーーーーーーーーッ!! ブリュルルッ!
――ブリュッブリリリブチュブリュルルルルッ!! ブチュッブジュブリリリブリーーーーーッ! ミュルルブリリリリブジュブボッ!!
 希は大量の軟便を吐き出し続けている。
 便の山の上に新たな便が積み重なり、お尻の高さまで届かんばかりの勢いだった。

「はぁ…………っく…………うぅ…………」
――ビュルーッ! ビュルルルルルルルルビチィィィィィィィィィィビュルーーーーーーッ!! ビュルッ!
――ブピッビシャーーーーブシャーーーーッビィィィィィィィィィィィィッ!! ブピッビシャァビューーーービシャビュルルルルルルルルッ!!
 由紀のお尻からは水状の便が放出され続けている。
 勢いが衰えるどころか、より悪化しているようだ。

「…………………っ………………ぁああっ……」
――ブバーーッビチーーーーーッ!! ……………ブジュブピーーーーーーッビチチチチブビィィィッ!
――…………ビュルルブジュルーーーーーーーーッ!!
――………………ビュルルルルブピピブバーーーーーーーーッビチチッ!! ビィッ!
 瑞穂も断続的な噴射を続けている。
 一回の噴射でまとまった量が吐き出されるようになり、少しお腹の具合が楽になったように見える。
 もっとも、下痢便を股下に溜めている姿を四方から見られ、顔色はむしろ真っ赤になってしまっているが……。


 下痢便の爆音は収まらないが、しかしひとまずおもらしにおびえる悲痛な声は聞こえなくなった。

(こ、これでどこか空いたらお尻を拭かせてもらえれば……)
 そう真由美がわずかに安堵して顔を上げた瞬間、その瞳に信じられない光景が映し出された。


「や、やっと……着いた…………もうっ、なんで空いてないのよっ! 早くしてよっ!!」
 お腹を押さえながら三角棒から飛び降りて駆け寄ってくる1年生が、5人。

「あ、あと少し……みんな、頑張って!」
 お腹をさすりながら、その後ろで三角棒を渡ってきている3年生が、5人。


 聖女学園の全女子生徒がほぼ同時に下痢に襲われ、トイレに殺到してきたのだ。


「そ、そんな……どうして………………っ!?」
 真由美の疑問には誰も答えられなかった。

 聖女学園の女子生徒は、普通の学校の生徒に比べて下痢になる回数が多い。
 学園生活の精神的なストレスや下着着用禁止によってお腹を冷やしてしまうこともあるが、直接的に下剤を飲まされて下痢をさせられることも少なくない。

 しかし、数人ならともかく、現在の在校生の記憶では、全員が同時に下痢になったことはなかった。

 なぜかはわからないが、しかし、全員が強烈な便意に襲われているのは間違いなく、数分前とは比べものにならない阿鼻叫喚の光景が待ち受けていることは確実であった。


――……ピー…………グルギュルルッ……ゴロログルルグルルグルルルルッ!
「……あ…………っ……そんな…………また………!?」
 そして、真由美のお腹の中では、出し切れなかった便が再度出口を求めて肛門に押し寄せてきていたのだった。



関連ストーリー:聖女学園 短編エピソード サイドストーリー059 「週刊 聖女新聞 〜集団食中毒〜



文章:メルティさん
修正/挿絵:ロック


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