第134章



 生徒手帳の確認というのは、生徒手帳の記載されている内容が、実際と食い違っていないかどうかを確認するというものである。
 この内容確認というのは、まったくの不定期で行われるものであり、教師もしくは男子生徒の手でなされる。
 教師については、特に何の制限もなく任意の状況で必要な際に生徒手帳の確認を行うことができるが、男子生徒が確認をする際には、先ほど提示された「生徒 手帳検査証」の提示が必要となる。
 これは、適宜必要な際に学校側から男子生徒に貸与される許可証であり、男子生徒はこの「検査証」を見せることで、「必要であれば」いつでもどこでも女子 生徒に「生徒手帳の内容確認」を要請することができる。
 その際、女子生徒側には拒否権はない。
 男子生徒が「検査証」を提示し、検査の宣告を受けた女子生徒は、必ずその内容確認に応じ、そして協力しなければならないことが義務付けられているのだ。
 普通の学校の生徒手帳で事実と異なる内容が書かれているはずはないのだが、この聖女学園での事実確認というのは、普通の学校とはまったく異なるものと なっている。
 まずはじめに、生徒手帳の内容確認を行う際には、その生徒手帳を携帯している女子生徒が間違いなく生徒手帳に書かれた本人かどうか確認するために、個人 認証を行わなければならない。
 この個人認証というのは、生徒手帳のはじめのページに記載されている本人の個人情報と、実際に携行している女子生徒が同一人物かどうかを確認する作業な のだが、その作業は、聖女学園独特のものとなっているのである。


 ……数分後……、希と美奈は、2人そろって全裸で立たされていた。
 場所は、学校の玄関の前……、午後の日差しが傾き始めた芝生の上である。
 それは、2人の少女が生徒手帳の内容確認に応じた結果だった。

 生徒手帳の1ページ目には、その女子生徒の顔写真と氏名、生年月日に加えて、その女子生徒の身長・体重、そしてバスト・ウェスト・ヒップのスリーサイズ といった基本的な身体データが記載されている。
 そして、1ページ目と見開きになる形で、2ページ目には女子生徒本人の全裸全身写真が添付されているのである。
 個人認証において、本人であることを確認するためには、生徒手帳を所持していた女子生徒が、この2ページに掲載されている女子生徒と同一人物であること を証明しなければならないとされている。
 すなわち、その全裸写真との照合をとるためには、女子生徒自らがその写真と同様の格好となること……全裸になることが必然的に求められているのだった。
 したがって、生徒手帳の内容確認を求められた女子生徒は、本人であることの認証を得るために、衣類を脱ぎ、一糸まとわぬ全裸にならなければならないので ある。
 そして、この生徒手帳の内容確認は、学園側の許可があれば――すなわち「検査証」を提示すれば――いついかなる場所で行っても構わないことになっている。
 そのため、今、この場で行われているような、白昼の屋外での確認ということもあり得るのである。
 女子生徒は、生徒手帳の内容を照合する際には、この確認作業に必ず応じるよう義務付けられているため、今のような、芝生の上で2人の美少女が裸を晒すと いうこの状況が生まれるのだった。

 希と美奈は、学園の規則に則り、その場で制服 を脱いでいった。
 そして全裸になると、希は美奈の手を握って勇気づけた。
 美奈も、その希の手をしっかりと握って、屋外で裸を……それも先輩の男子生徒の目の前に晒す羞恥心に、必死に耐えていた。
 2人とも、つないでいないほうの手は横に下ろしている。
 この個人認証の際には、身体を隠すような行為は固く禁じられている。
 胸はおろか、股間さえも手で隠すことは許されない。
 おっぱいの膨らみ方や乳首の色形、股間の割れ目の形状や陰毛の生え方までも、個人認証の一環として確認を受けるためである。
 普段の学園生活における男子への反抗的な態度や、ちょっとした抵抗などのようにあいまいな校則違反の場合には、その境界がはっきりしないため、ある程度までは罰を免れることが あるが、生徒手帳の内容確認のように、はっきりと校則に明記された手順に従っているときには、わずかな逸脱行為であっても、即座に校則違反を指摘され、罰を受 けることになってしまう。
 この生徒手帳確認による全裸確認においては、手で胸や下腹部、股間部、臀部を隠す行為は重大な違反行為として固く禁じられている。
 そのため、どんなに恥ずかしくとも、この全裸確認の最中は、決して手を恥部に近づけることはできないのである。
 希は無言で男子生徒をにらみつけながら、美奈は恥ずかしそうに視線をそらせながら、男子生徒たちの不躾で淫猥な視線を身体で受け止めていた。

「さーて、それじゃあ本人確認をしようかな?
 えっと、まずは希ちゃんからね。
 どれどれ……この全裸写真と見比べて……」

「……くっ…………」

 希は、クラスメイトの男子生徒が手にした自分の生徒手帳を見つめる。
 そこには、希の女の子としての恥ずかしいデータがすべて載っている。
 その中身を憎たらしい男子生徒に見られることが、耐えられなかった。
 そしてその秘密を見られると同時に、素っ裸の素肌を晒すことに、たとえようのない恥辱が湧き上がる。
 それでも希は気丈に身体を隠さず、立っていた。
 それは、横に立つ美奈を庇うような態度とも見える。
 しかし、そんな希の心の動きとは関係なく、男子生徒はいやらしい視線を希と、そして横に立つ美奈に向けていた。

「さて、希ちゃんのオッパイは写真とおんなじかな?
 う〜ん、乳首がちょっと大きいかな〜?
 それより、希ちゃんのトレードマークといえば、このマン毛だよね。
 この生えっぷり……これは本人かな?」

「それじゃあ、俺は美奈ちゃんの確認をしてあげようね。
 美奈ちゃん、まだまだツルペタだね〜。
 ほら、この写真なんかまるで小学生だよ。
 うんうん……このクッキリ縦スジの割れ目ちゃんは、美奈ちゃんっぽいね♪」

 先輩の男子生徒のいやらしいからかい声に、身をこわばらせる美奈。
 思わず、希の手を握る手に力が入る。
 それにこたえるように、希もギュッと手を握り返してくれた。
 美奈は、そんな希の無言の応援で、辛うじて身体を隠さずに耐えていた。
 この生徒手帳の内容確認において、身体を隠したり協力を拒む行為をしてしまうと、即座に職員室に連絡されてしまう。
 そうなったときの仕打ちのことを考えれば、今、ここで恥を忍んで言うとおりにしたほうが、まだマシ……というのが、これまでの経験で知った処世術だっ た。
 理性ではそう理解していても、やはり年頃の少女たちにとって、その裸身を無遠慮に観察され、論評されることは、耐え難い苦痛と羞恥を伴うものである。
 しかし、これはまだ生徒手帳確認における本人確認は序の口に過ぎない。
 本当の生徒手帳確認は、これから行われるのである。


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