乃梨香の放課後



――7

 乃梨香の目覚めは正午前。
 普段の生活からしてみればあまりにも遅い起床だった。
 学園の厳しい規則は当然寮生活にも反映されている。
 起床は早いし、時間にルーズな生徒には罰則もある。
 そんな規則が故に身体が覚えてしまった起床時間。
 普段ならば起床時間前に自然と目が覚めてしまう乃梨香であったが、昨晩の果てるような絶頂の連続は、惰眠を貪らなければ到底回復できない疲労を身体が覚えていた。
(――学園がゆっくり眠らせてくれたのかな……)
 反省室の掛け時計を目に寝ぼけ眼の乃梨香の頭は当然働いていない。
 とっさに出た思考も、後に考えればどれだけ愚かなことかと思えるほどである。
 自由。
 この反省室には乃梨香が経験したモノ、そして他者から語り継がれてきたモノ、そのどちらともつかない決定的な違いがあった。
 たった今の目覚めでさえそう。
 罰則を決めるのも、排泄をするのも眠りにつくのも男子生徒のいうことを聞くことでさえ、全てが乃梨香の自由であった。
 自由は責任。
 このことに乃梨香自身が気づくのはまだ少し先にはなるが……。
 罰則の終了時期を決めることですら自分なのだ。
 果てるような惰眠は乃梨香の頭を空にはさせたが、バインダーに入ったカードは2枚。
 先の見えない戦いに乃梨香の瞳は少し虚ろ気だった。


文章:橘ちかげさん
加筆・修正:ロック


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